NEC から発売されたプロフェッショナル向けモニタのフラッグシップモデル「MultiSync LCD2690WUXi」。
25.5インチWUXGA・NTSC比91% を誇る IPSパネルと、
ハードウェアキャリブレーション・ムラ補正機能 等を備えた、
高品位次世代ディスプレイの使用感・性能・他製品との比較をレビューしています。
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※ 販売価格は日々変動しています。また、会員特典や代金支払い方法、タイムセール、特定店舗での特別価格など購入条件によっても大きく異なるため、このサイトに表記されている販売価格に関するお問い合わせはご遠慮ください。
発表直後の予約段階から20万円を切るショップがそこそこありました。さらに2月に入ってから挑戦的な価格で提供するショップが登場し実効最安値:174,417円をマーク。ちょうどこのとき、私は LCD2690WUXi を購入しました。その後、なぜか値上がりし19万円を超えてしまいましたが、だんだん値下がりし、現在では17万円台で購入することができます。
この製品レビュー記事には、いくつかの客観的・実測のデータを記載していますがその信憑性・正確性等については保証できかねます。 そしてこの製品に関する記述はあくまで主観的・感覚的なものです。また、私自身の知識不足、勘違い等から不正確な情報を載せてしまっている可能性があるため内容を鵜呑みにしないで下さい。 (お恥ずかしながら液晶ディスプレイ購入を検討し始めてからかき集めた「知ったかぶり」に近い知識ばかりです・・・)
この製品レビュー記事は、製品開発元の NEC や他のベンダー・販売店等とは一切関係ありません。また、この記事について 当サイト以外の組織、フォーラム(掲示板)等に質問しないでください。(相手方が迷惑します。)
そしてディスプレイはコンピュータを使う上で最も重要な出力デバイスの一つです。モニタの新規購入を検討されている場合、 ぜひほかの使っているユーザーや詳しい知人からの感想・アドバイスをもらったり、店頭やショールーム・展示会等でじっくり実機に触ってみてください。 かく言う私はこの LCD2690WUXi にこの上なく満足しています。
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▲ これらの画像が全て同じように見えるのが正常です。もし色が明らかにおかしくなっている場合、残念ながらあなたが見ている画面ではカラーマネージメントシステムは一切働いていません。→ 正常に表示された例はコチラ
※ このテストは、あなたが使っているシステムが画像に埋め込まれたメタデータを解釈し色に反映するか調べるためのものです。ですからディスプレイの性能や設定、キャリブレーション実行の有無に一切依存しません。 この比較画像について興味を持った方は、ICC(International Color Consortium:国際色協会)のウェブサイトにある「Is Your System ICC Version 4 Ready?」でより詳細なテストができます。ちなみにCMSが正常に動作する環境ではこのように表示されます。
さかのぼること7年前の2000年3月、 念願の自分専用コンピュータ・Apple Computer / Power Mac G4 ( 400MHz / 192MB / 10GB ) と、三菱の17インチCRT・Diamondtron Flat RDF17S を購入しました。 このころはコンピュータ用ディスプレイといったら完全たるCRT全盛時代でした。このCRTを数年使っていくうちに作業スペースの狭さを感じはじました。 そんなとき(都合良く?w)管表面のコーティングが剥げてしまい、新しいディスプレイの購入を決めます。
2004年というと各メーカーのCRT撤退がすでに進んでいる時期でした。 狭い部屋という背景もあり「液晶を買おう!」と決め、具体的な機種選びに入りました。いくつかの製品に目星を付け、実際に見てみようと秋葉原にある「Tsukumo モニタ王国」という店に足を運びました。 「最近の液晶は画質よくなったなぁ〜」などと思いながら液晶を見て回る中、店内の一番奥にある棚の一番下においやられたCRTを発見しました。 そしてそのCRTが映し出す絵の美しさに一目惚れしました。その瞬間、すべての検討案が吹っ飛びそのCRTを購入しました。これが EIZO T766 でした。 ついこの前まで高校生だった私にとって、EIZO(ナナオ)というと雲の上の存在のようなメーカーでした。(当時は「BNC入力ついてるよ、おい!」と無性に感激したものです。)
19インチの広い画面、美しい発色、EIZO製品。そしておそらく「投げ売り」であっただろう価格(6万円)すべてに満足していましたが、 その後、高校1年の妹が生意気にも Apple Computer iMac G5 20.1インチモデルを購入。 1680 x 1050 ピクセルという広大なスペースと、腐っても S-IPS パネルと言うべき広い視野角、CRTに勝るとも劣らない発色の良さ、ワイドディスプレイの便利さに驚きました。 2006年にメインマシンを Apple MacBook Pro 15.4" にリプレイスしたものの、ディスプレイの品質の悪さにももっと驚く。(ラップトップコンピュータの液晶に品質を求めてはいけません。)なので、本体の液晶は使わずT766をメインで使っていたのですが、ある日突然画面に斜めの線が無数に走るようになりました。 ナナオのディスプレイには長期保証がついているので、修理を依頼したところ「管の劣化が原因で、しかも管は長期保証対象外だから有料修理だ」と高額な修理見積もりをつきつけられてしまい、なんのための長期保証なんだ!と頭にきつついよいよ「ワイド液晶ディスプレイ」の購入を決意します。
ワイド液晶ディスプレイの購入にあたり以下のような指針を掲げました。
最初は、アップルの Cinema Display 23" を検討しました。でも入力が1系統しかないことや、コストパフォーマンスの悪さから決めかねていました。 (価格の割りには画質が優れていない。)その後、EIZO から FlexScan S2410W という品質重視型24.1インチワイドディスプレイが発売されますが、パネル表面があまりに醜く断念。 その後、注目の最新 LG H-IPS(S-IPSの進化系)を積んだ三菱ディスプレイの RDT261WH が青天の霹靂の如く登場しました。 数年前の流行語を借りれば、まさに「ビビビと来た」的製品で真剣に購入を検討しました。RDT261WH は、 インターレース映像信号入力に対応している上に、隠し機能で色差入力まで対応しているという前代未聞なマルチメディア対応ディスプレイでした。 (詳しくは、当サイト内「MITSUBISHI RDT261WH 特集・製品レビュー」をご覧下さい) しかしその後、NECから RDT261WHと同じパネルで、輝度ムラ・色ムラ補正機能や、ハードウェアキャリブレーション、高精度なカラーテーブル、ピボット対応 などの多くの機能をひっさげた「LCD2690WUXi」が発表されました。 定価は25万円とかなりお高かったですが、すでに予約を開始していたショップの一部では20万円を切っており、こちらも検討することにしました。
そしてまたもや「Tsukumo モニタ王国」にいくつかのワイド液晶ディスプレイを見に行きました。そして LCD2690WUXi の絵に一目惚れ、そして買うことを決意しました。 (このときは、自分が3年前に同じ店で 一目惚れで T766 を買ったことは覚えていませんでした。我ながら行動パターンが進化していないことに呆れますw)
2007/1/25 に LCD2690WUXi と SpectraNavi を通販で注文。手数料、送料等込みで総額 18.8万円。(ちなみに定価で買うと26万円弱!!) LCD2690WUXi 本体は 17.4万円と発売日からまだ日が浅いことを考えるとかなりがんばっていただいたと思います。さらに前に買った、gretagmacbeth ( X-rite ) Eye-One Display 2 : 34.5k円 (送料込) も併せて、今回構築したディスプレイ・カラーマネージメント環境 の総額は 22万2千円 となりました。
しかし注文したはよいものの納期が全く確定せず「メーカーすらわからないみたいです。」とまで言われる始末。 ヘタしたら3月下旬〜4月になるとまで噂される中、どことなくキリの良い数字な 2/22 に突然到着。 いきなり朝一番に佐川急便のセールスドライバーから「18万円代引きの荷物、持ってってもいいっすか〜?」と電話が来てビックリしました。 ネットを見ていると、他の購入者も当然到着したという話を多く聞くのでまだ流通が安定していないのかも知れません。
そして、届いてからもビックリです。箱がとにかくデカい! 19インチのEIZO CRT : T766 の段ボールよりも遙かに大きいんです。 でも CRT のときと全く違い、大きさの割りに軽く違和感を覚えました。さっそく設置してみました。 やっぱりデカい。店頭でみるのとは様子が全く違います。そんなこんなで MBPと接続したところすぐに認識し、通信を行いディスプレイから LCD2690WUXi のカラープロファイルをダウンロードしました。 チェッカーで確認したところドット欠けは一切ありませんでした。よかったよかった・・・。
とりあえず設置。とにかくデカい。特に、ピボット(縦回転)したときは圧巻で、ディスプレイというより「塔」もしくは「石碑」という言葉の方が似合うくらいです。三番目の写真の手前に写っているのは Apple MacBook Pro 15.4"、その奥が EIZO T766(19インチ)です。
▲ 3番目の写真は画面の視野角にも注目(ややマゼンタがかっている)
LCD2690WUXi のスタンドは非常に優秀で、 高さを15cm、角度を上に30度、下に5度 傾けることが出来ます。一人で作業するときは、最低高にしてやや上に傾け、目線下に画面を置いています。また、家族で写真やムービーを見るときは、画面を水平にしてやや高めにしています。スタンドは12kgにもなる重いディスプレイ本体を支えているとは思えないほど柔らかく、高さ調節・角度調節・ピボット など全ての操作が片手で十分可能です。(そのかわり、ちょっとぐにゃぐにゃしています)
そして、さすがハイエンドモデルだけあり、無意味にボディーにデコボコをいれたり、曲線をつかってみたりなどの小細工は一際せず、大変薄いベゼルに仕上げています。これにより、26インチという巨大パネルを使いながらも、設置幅60cmというコンパクトサイズに収まっています。(画面を回転するとき、途中で幅がふくらむため幅60cmの棚の中に入れて使うことはできません。)
▲ ひっそり、かつ凜とした 鏡面仕上げの NECロゴが入っている。 ボディー全体の材質も含め高級感が漂っている。
それにしても液晶ディスプレイとは思えない厚み。ただならぬものを感じる・・・。
LCD2690WUXi は、背面も美しく実に機能的にしあがっています。本体はサイドやバックに多くの廃熱用スリット・パンチが開いており、この液晶ディスプレイの発熱量が非常に多いことを物語っています。本体デザインでもっとも特筆すべきは、裏側の上部についている取っ手です。これが大変、いや、" とって"も便利なんです。まず、糞でかい段ボールから本体を取り出すときに、この取っ手はさっそく役に立ってくれます。近年、家電製品・電化製品が巨大化しており、段ボールから製品を出すときに製品を傷つけてしまうというトラブルが多発しているそうですが、これなら安心です。 また、デジタルカメラを使っての出張撮影などで、撮影機材やディスプレイを持って各地に飛び回るカメラマンなどにも重宝されるでしょう。
また、アーム部分についているコネクタカバーも大変魅力的です。カバーをはずすとケーブルを引っかけるツメ・ガイドがついていて、ここに電源ケーブル・信号ケーブルをスマートに格納することができます。また、この機構は見た目をスッキリさせるだけでなく、ピボット時にケーブルが引っ張られ抜け落ち・断線してしまうトラブルを防ぐ役目も持っています。
▲ 写真ではわかりずらいが、ブルーLEDは従来の緑や赤のLEDよりもはるかに眩しい。
そんな薄いベゼルでも 操作ボタン群は非常に使いやすくできています。メニューを行き来するカーソルキーが、左右キーは横、上下キーは縦に配置されており、直感的に操作することが出来ます。さらに画面を回転させると、左右・上下キーが入れ替わり、回転した状態でも操作感が失われません。また、清涼感・近未来感が出ると近年積極的に使われているブルーLEDですが、輝度が非常に高く目に刺さるような光を不快に感じるシーンが多々あります。LCD2690WUXi は、インジケータランプを 青と緑に切り換えられるようになっています。 さらに、これらのLEDは明るさが調整できるようになっており、それでも邪魔なら消灯することも可能です。 こういった細やかな配慮はウレシいですね。
これらのように、目立つ飛び道具的なギミックはありませんが、基本性能・機能を確実におさえた非常に高品質なボディー・スタンドに仕上がっていると言えるでしょう。
同パネルを搭載した MITSUBISHI RDT261WH では、廃熱が十分できず故障する恐れがあるためモニタを回転して使う「ピボット」を禁止しています。では LCD2690WUXi はどのくらいの熱を持つのでしょうか? 赤外放射温度計で4時間ほど稼働させ続けた LCD2690WUXi の表面温度を測ってみました。ちなみに室温は22度・パネル輝度は 140cd/m2。
また、輝度を最大にして連続稼働させた際、本体上面・パネルと制御部の間・中央やや左側で最大温度:48度を記録。(スリットの間から測定した内部温度) どうやら、左側に電源部があるようで温度が高い。(電源ケーブルや、主電源スイッチが左側についていることからも想像できる。)これらの温度がどの程度のものなのか私にはわかりませんが、何かの足しになれば幸いです。
※ 以上の写真は外光をすべて遮断し、KONICAMINOLTA DiMAGE A200 で撮影したものです。露光時間・絞り・ホワイトバランス・CCD感度 などのパラメータはすべて同一です。
LCD2690WUXi が採用する LG H-IPSパネルは、大型のワイドパネルという事もあり視野角が若干シビアになっているように感じます。 画面を白一色で表示させたとき、上下方向からみると黄ばんだ白になります。画面にかなり近づいて頭を上下させると黄ばみをハッキリ確認できます。横から見た場合、色はほとんど変わりません(強いて言えば、シアンやグリーンのフィルタが被ったように見えます)が、それよりも輝度が大きく低下するのが特徴的です。これは H-IPSパネルに視野角補償フィルムが張られているためと考えられます。
上記の写真で特筆すべきなはガンマカーブの変化です。グレタグマクベスのテスト画像にあるグレーグラデーションに注目すると、ガンマがほとんど崩れていないことがわかります。まさに「腐ってもIPS」ですね。(技術革新によりVAパネルも広い視野角を実現しつつあり、角度による色度変位はだいぶ少なくなりましたが、ガンマバランスに関してはIPS系パネルの足元にも及ばないのが現状です。)
ハードウェアレビューサイト「BeHardware」では、LCD2690WUXi の視野角について以下のように述べられています。
このモニタのテクノロジーについて調べるためにデータシートを見る必要は全くありません。視野角が広いことは自ずと分かります。斜めからディスプレイを見たときの美しさは(他のIPSパネル搭載製品を除いて)他に見たことがありません!
Vincent Alzieu 氏
LG H-IPS パネルは前世代の同社パネルより格段にギラギラ、ツブツブ感が軽減されました。 EIZO S2410W や S2411W にある、一目見ただけで気になる虹色の不快なキラキラや、傷のようなノイズは全く見られません。 しかし赤・緑・青などの原色を一面に表示したとき、ややパネル表面が「サワサワ」「ザラザラ」したような不均一さを少し感じます。(特にグリーンで顕著。)でも、こんな色を画面いっぱいに表示する機会はまずありません。 これは、工作精度の向上や、IPSパネルの宿命だった低い開口率を改善したことが貢献したかも知れません。 HITACHI の S-IPSパネルを搭載した EIZO L997 などには遠く及びませんが、輝度を最大にして、画面と目の距離を10cmくらいまで縮めて凝視するような自殺行為をしない限り問題ないレベルに達したと思います。
▲ LCD2690WUXi (LG Display H-IPS) ピクセル拡大写真
使用カメラ:KonicaMinolta DiMAGE A200
従来の LG S-IPS と比べピクセルの形が整っており、また開口率が向上していることがわかります。IPSはVAのように駆動率によって視野角が狭まることはないので、暗い部分でも全体的にぼんやり光らせることができます。
一般的なS-IPSパネルは「く」の字に曲がったピクセル形状をもっていますが、H-IPSはドメイン同士の相対角度が大きくなっており、「ハ」の字を90度回転させたようなサブドメインをいくつも並べ、全体的に台形のようなサブピクセルを形成しています。このような特殊なドメイン配列により開口率を高めることができましたが、IPS独特の視野角によるカラーシフトが抑制しきれなくなっています。IPS最大の魅力は視野角の広さですので、次モデルで改善して欲しいです。
IPS系パネルはその構造から、バックライトの光が漏れやすくコントラストが上げられないという課題を持っていました。 しかし技術は進み、LCD2690WUXi 搭載された LG H-IPSパネル では最大800:1 のコントラスト比を実現しました。 それでも夜中に照明を全て消し、黒画面を表示させるとバックライト漏れがよくわかります。特に斜めからみたときに、画面の一部が緑がかって見えたり、紫がかって見えます。
IPSパネルを含めたすべての液晶ディスプレイが持つコントラスト比の問題は、しばしば映画鑑賞などにおいて「黒浮き」(真っ暗な部分がぼんやり光ってしまうこと) として悲観されがちですが、LCD2690WUXi の用途を考えるとコントラストはほとんど問題ないと言えます。そもそも照明が全くない部屋でシビアなグラフィック処理をする機会はほとんどありません。 (さらにそんな環境下で画質を求めるのはナンセンスです。)
些細なことですが、パネルの中央を指で押すと「パコッ」とベニヤ板を押したような小さな音が鳴ります。 ラップトップコンピュータですと、外部からの衝撃・圧力に耐えるために液晶パネルを浮かすようにマウントしていると聞きますが、デスクトップ型LCDはどうなんでしょうね。 別にペコっと言うから何なんだ、って話ですが…(^^;