WUXGA対応高解像度ワイド液晶ディスプレイ選び

■ HDMI についての補足 ■

フルHD映像とマルチチャンネル音声を、ケーブル1本で劣化なしに転送できる 次世代デジタルAVインターフェース・HDMI。
しかしHDMIはたいへん高度で繊細な技術で運用されているため接続トラブルが相次いでいます。
当ページでは、ほとんどのトラブル原因である HDMIケーブルについて、規格と選び方を解説します。

■ そもそもHDMIとは?

 HDMI とは High-Definition Multimedia Interface の略で、AV機器間を接続する次世代インターフェースの1つです。とても小さなコネクタと、細くて取り回しやすいケーブル1本で高解像度映像(フルHD、ハイビジョン)と、マルチチャンネル音声を転送できるとても便利な規格です。HDMIで接続された機器、たとえば Blu-ray Disc プレーヤと 液晶テレビの間は非圧縮のデジタル信号で転送されるため、映像・音声が一切劣化しないという強力な特徴を持っています。また、HDCP ( High-bandwidth Digital Content Protection ) とよばれる著作権保護機能(暗号化)を持っているため、コンテンツベンダー(映画会社等)もHDMIの普及を心待ちにしています。

 HDMIは現在 世界的に広まりつつあり、アメリカではHDCPへの対応が義務づけられているため爆発的普及がすでに始まっています。日本でも、ハイビジョンテレビ(液晶、プラズマ、リアプロジェクション)やハイデフビデオゲーム機(PLAYSTAION 3 , Xbox 360 等) の登場で、急速に広まり始めています。さらに SACD などのピュアオーディオの世界でもHDMIが使われつつあり、スタンダードインターフェースになるのは間違いないでしょう。

■ HDMIの歴史

 HDMIはコンピュータとデジタルディスプレイを接続する DVI ( Digital Video Interface ) に、音声伝送機能著作権保護機能 (HDCP)色差 (YUV) 映像方式のサポート を加え、米 Silicon Image 社を中心に2002年末に制定されました。よって、DVI と HDMI は兄弟のような存在であり、ある程度の互換性を持っています。

HDMI Aコネクタ HDMIコネクタ Aタイプ 19ピン
▲ 最も一般的な タイプAコネクタ(19ピン)

 HDMI はそのコネクタに、 19ピンの「タイプA」、29ピンの「タイプB」、タイプAを小型化した「タイプC」の3つがあります。現在販売されているHDMI対応機器のほぼ全ては 19ピンのタイプAなので、コネクタ形状でトラブルになることはしばらくないでしょう。

■ HDMIの規格

 しかしHDMIには、伝送する映像・音声のフォーマットや信号方式に複数のバージョンが存在します。これが大きなトラブルを招くことがよくあります。AV機器やケーブルの組み合わせを誤ると、映像が映らなかったり特定の機能が利用できないトラブルが発生します

HDMI 1.1 (2004)

HDMI 1.2 (2005)

HDMI 1.2a (2005)

HDMI 1.3 / 1.3a (2006) : 次世代HDMI

 ここで注目すべきは HDMI 1.2 と 1.3 の変化です。 非常に高品質な映像・音声をサポートするために、従来よりも高速な信号伝送方式を採用しています。このことから HDMI 1.3 / 1.3a は「次世代HDMI」と呼ばれ、従来のHDMIと区別する必要があるのです。 数々の仕様が改められたために、多くの人々は「HDMI 2.0 」と名付けられると予想してたほどです。

 また、HDMI 1.2a でサポート、HDMI 1.3a で強化された「機器間制御機能」によりHDMI対応機器同士で高度な連帯ができるようになりました。この機能を利用し、松下電器は「VIERA Link」、シャープは「AQUOS ファミリンク」という連帯機能を自社の製品に採用し、液晶テレビやHDDレコーダの連動が可能になりました。しかしこれらの具体的プロトコル(通信命令方式)は各社独自のもので、あくまで同じメーカーの機器同士としか連帯できないことが指摘されています。これらの機能は、メーカーが「抱き合わせ販売」的な戦略を講じていることが原因とされており、ユーザーの利便性を考えた製品開発が待たれます。

● TMDS・iTDMSについて

 HDMIの映像伝送には、DVIと同じTMDS(Transition Minimized Differential Signaling)という高速シリアル伝送方式が使われています。TMDSは米Silicon Image社が開発した「PanelLink」という方式を拡張したもので、VESA(Video Electronics Standards Association)によって標準化されています。TMDSでは映像伝送に3つのチャネル(赤・緑・青 各1チャンネルずつ、それぞれチャネル0、チャネル1、チャネル2と呼ぶ)+同期用のクロックチャネル(チャネルC)の計4チャネルを束ねて“リンク”として用います。WQXGAディスプレイの接続に用いる「デュアルリンクDVI」とはTMDSを2リンク使っていることを意味しています。1つのチャネルは2本の50Ω信号線による差動駆動によって伝送されるため、1リンクあたり最低8本の信号線・端子が必要になります。HDMIケーブルでは各チャネルごとにシールドが施されているためさらに4本増えて12本、それに電源供給やホットプラグ検出用信号線などを加えて合計18本もの導線が通っています。すごいですねぇ・・・。ちなみにHDMIコネクタは19ピンですが1ピンは予備として結線されていません。

 TMDSの伝送容量は1チャネルあたり1.65Gb/s.です。1リンクには3本のデータラインチャネルがあるため、1.65 × 3 = 4.95Gb/s. の伝送能力を持っています。HDMI 1.3 に採用されている iTDMS ではクロックレートが約2倍の340MHzになり10.2Gb/s.になっています。しかし今現在、民生用として製品化されているiTDMS伝送機器の最大クロックレートは225MHzです。まだ HDMI1.3の能力をフルに使う映像機器は存在しないというわけです。

■ HDMI のケーブルに関する注意

● なぜHDMIはケーブルの品質に依存するのか

 HDMI は非常に広帯域なインターフェースで、クロックレートは 165MHz、HDMI 1.3 では 340MHz に達します。黄色いピンケーブルでおなじみのコンポジットビデオ端子や、S端子に接続するケーブルで伝送される 480i NTSC 映像信号の帯域がわずか13.5MHzであることを考えると、HDMIがどれだけすさまじい信号を伝送しているのかおわかりになるでしょう。

そのためケーブルには、従来のインターフェースでは必要なかった 高周波ノイズ対策 を含めた、非常に高い伝送品質が求められます。HDMIケーブルを購入するときは、ケチらずハイグレードなものを購入しましょう。

● HDMIケーブルに関する注意

 ケーブルの品質は大抵、ノーブランド製品付属品 <= エレコムの安物 サンワサプライなどのコンピュータサプライメーカ < オーディオテクニカ等のAVメーカー < モンスターケーブル等の Hi-Fi ブランド となっています。また、例えばオーディオテクニカでは、スタンダード・ハイグレード・スーパーハイグレード(ART Linkシリーズ)などにグレード分けされており、3000円 から2 万円のものまであります。モンスターケーブルに至っては、2mで4万円と半分プラシーボ効果で構成される高貴なピュアオーディオの世界に突入してしまいます。ケーブルに何万円もつぎ込む必要はないと思いますが、2m以上の長いケーブルを使用するならば 3000円以下のケーブルは避けたほうが無難でしょう。 安価なケーブルの中には導線が適切にツイストされていない粗悪な製品もあるので注意してください。

ツイストペアケーブル
 ツイストペアケーブルとは より対線 とも呼び、+と−の2組の導線がペアでねじれ合っているケーブルで、平行線ケーブルよりもノイズに強いのが特徴です。これはみなさんが小中学校の理科で習った電気の「右ねじの法則」「フレミング左手の法則」のような法則を利用したもので、外来ノイズにより発生する磁界を、導線をねじることでノイズを打ち消し合うわけです。同じ原理で、ケーブル自体が発生させるノイズも打ち消され、外部に影響を与えない特性も持ち合わせます。このツイストペアケーブルは、USBケーブル、FireWireケーブル、LANケーブル、そしてディスプレイ用ケーブルなど様々な高速伝送ケーブルに用いられています。安価で粗悪なケーブルは、ねじれが弱かったり、ねじれ具合が均一でなかったり、最悪の場合一切ねじられていない場合すらあります。
モンスターケーブル : MONSTER CABLE
 1979年、サウンドエンジニアのノエル・リー氏は、仕事に使う機材について「機材本体には莫大なお金をかけて品質を求めるのに、なぜケーブルを全く気にかけないんだろう。」という疑問を持ち、音質向上のためケーブルを自作し始めました。(今では驚くべき事ですが、当時はケーブルの品質は音質にあまり影響を与えないという認識が一般的だったそうです。)そして完成したケーブルは、周囲のエンジニアを驚かせ、またオーディオマニアの間にたちまち広まっていきました。他社のケーブルが、導線の純度OFCなどに始まる話ね)にこだわり続けたのに対し、モンスターケーブルは、高い周波数の信号ほど導線の外側を通り、また周波数によって伝搬スピードが異なるという2つの信号特性に着目しこの問題を回避する特殊な構造:バンドウィズスバランス構造タイムコレクト構造 をケーブルに取り入れました。 また、ピン先を2つに割ったスプリット・センターピンや、らせん状のスリットが入った ターバインプラグ などの独特コネクタや、何十にも張り巡らされた絶縁体とシールドによる太いケーブルは、まさに「モンスター」の名にふさわしい独特な形状をしています。非常に丈夫にできているため、オーディオマニアでなくても愛用してほしいケーブルなのですが、残念ながら日本では 本国アメリカの3〜5倍の値段が付けられており、とても気軽にでが出せるブランドではなくなっています。ちなみにかく言う私は高級ケーブルは持っていません。(ソニー、オーディオテクニカあたりの Hi-Fiケーブルくらい)

 余談ですが、CD-Rメディアや、このようなデジタル信号ケーブルでしばしば「流れてる情報はデジタル、つまり1か0の世界なんだから音質・画質に影響なんてない!」という主張がなされます。たしかにデジタルデータが劣化しないのは事実です。しかし、信号自体は紛れもないアナログ信号なのです。その情報がもつエラー訂正能力を超えてしまう伝送エラーが発生すれば、情報の一部が失われ、画質・音質は劣化します。コンピューターのデータは1ビットの誤りも許されないため、頑強なエラー訂正機能と、エラー発生時のリトライ・警告機能を持っていますが、映像・音声などは少しのエラーなら致命的な問題にはならないため無視します。そのため、エラーを少なくするためには、従来のアナログ時代と同じアプローチが必要なわけです。

■ HDMI ケーブルの選び方

● 重要視すべき要素

必要最低限の長さのケーブルを買う
 これは、ケーブリングにおいて基礎中の基礎、そして最大の効果が得られる要素です。必要以上に長いケーブルは信号を減衰させ、外来ノイズをより侵入させてしまいます。さらに美観や価格面を考えても良いことなしです。大は小を兼ねる、長ければいろいろ使い回せそう と長いケーブルを買うのはやめましょう。
ツイストされたケーブル(より対線)を買う
 前章で述べたように、平行線における最大のノイズ対策の基本はツイストです。導線をねじるのは、めんどくさいですし、必要な導線も長くなるため激安ケーブルではツイストされていなかったり、より具合が弱い・まばらな場合があります。これだけは絶対に確認しましょう。既存のケーブルの場合、ケーブルを強くつまみながらケーブルを引っ張ったとき「ゴツゴツ」「デコボコ」した感触を得られたら、そのケーブルはツイストされています。(USBケーブルやLANケーブルでやってみましょう)
カテゴリ(HDMI CAT.)
 HDMIケーブルには現在2つのカテゴリが存在します。これは LANケーブル等と同様に 高いほど広帯域をサポートしたケーブルであることを示しています。また USB1.1、USB 2.0 対応ケーブルの関係に近いとも言えます。HDMI 1.3a 以上の場合 カテゴリ2ケーブルの使用が義務づけられています。もちろん カテゴリ2 のケーブルの方が高品質なため、 品質や将来性を考える人は HDMIのバージョンに関係なくカテゴリ2準拠ケーブルを買うと良いでしょう。

● やや重要な要素

金メッキプラグ
 「Hi-Fi」「Hi Grade」などの名前がつく高価なケーブルのプラグには、よく金メッキが施されています。別にこれは高級感を出すためではありません(笑)。また、金が特別に電気を通しやすいわけでもありません。ご存じの通り金は非常に変質しにくい性質を持っています。個人的にあまり金メッキは重要視していませんでしたが、HDMI の場合ピン1つの大きさが極めて小さいため、わずかなサビ等による接触不良が致命傷になることがあります。そのため HDMI ケーブルの場合は金メッキが施されているかチェックしたほうがよいでしょう。
無はんだ接合
 前章で述べたとおり HDMIは非常に高い周波数帯を使うため、導体同士の接続には注意しなくてはいけません。。安価なケーブルで使われている半田による接合は、特に高周波数帯の信号を大きく損失してしまいます。そのため HDMIケーブルは、プラグが スポット溶接カシメ接続されているものを選びましょう。

● あまり重要ではない要素

 
防振構造
 ピュアオーディオな方に語らせると凄い。
LC-OFC素材、Hi-OFC素材、PC-OFC素材、PCOCC素材、・・・
 ピュアオー(以下割愛)

 いろいろ語ってしまいましたが、心配だったら一流AV機器メーカーのを買うのが一番です。またコンピュータサプライメーカーのケーブルを買うのは注意した方が良いでしょう。オーディオテクニカ、ビクター、ソニー、オンキヨー 等のAV機器メーカはアナログ時代からの高品質ケーブルを作るためのノウハウを十分持っていますが、 一部のサプライメーカは「適当に導線買ってきて作ればいい」というカルチャーを持っています。品質のよくないケーブルですと、たとえば「 1080i は映るのに、1080p は映らない 」と言った一見ケーブルが原因とは思えないトラブルも発生します。

■ HDMIケーブルの取り扱いに関する注意

 HDMIは、フルハイビジョン映像と高音質なオーディオを同時に送ることができ、家庭用コネクタとしては非常に多いピン(現在一般的なタイプAコネクタの場合19ピン)持ちながら非常に小さいコネクタが採用されています。これは姉妹規格である DVI のコネクタを見ても明らかです。また、DVI のサイド固定ねじのようなロック機構がないのも特徴です。そのため、HDMIコネクタ、HDMIポートの扱いには細心の注意が必要です。

DVI-D と HDMI コネクタの比較
▲ DVI-Dコネクタと HDMIコネクタ(プラグ)
  姉妹規格である DVI と比べても1つのピンが極めて小さい。またDVIはピン-オス型、HDMIはアンフェノール-メス型を採用している。

 乱暴にHDMIケーブルを抜き差しすると、コネクタ・ポートが歪み、接触不良簡単に抜けてしまうなどの問題が発生してしまいます。特に、重いコネクタ変換アダプタは要注意です。アダプタとケーブルの重みでポートに てこの応用的な負荷がかかり、ポートを痛めてしまいます。HDMI - DVI 変換アダプタを用いる場合は、DVI端子側に付けることを強くオススメします。つまり、DVI -> HDMI に変換し、装置間を HDMIケーブルで接続するということです。 また、モンスターケーブル社からはこの問題を考慮してか、短いケーブルがついた分離型の変換アダプタが発売されています。値は張りますが高い評価をうけています。

   
※ DVIやHDMIのアダプタ・ケーブルについては「MITSUBISHI RDT261WH 特集 | HDMI、DVIケーブル 一覧」ページにまとめましたのでご覧ください。

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