このページは、フルワイドVGAに対応した3.2インチ IPS液晶ディスプレイを搭載した
NTTドコモの携帯電話:FOMA F905i のディスプレイについて写真と共にレビューします
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FOMA F905i は富士通から2007年11月に発売されたNTTドコモ第3世代携帯電話です。この機種は、高性能なCPUを積んでいるため「iアプリ」などの高負荷アプリケーションがとても軽快に動作することや、指紋認証など各種セキュリティー・プライバシー保護機能が充実しているのが特徴ですが、F905i最大の特徴はメイン画面であると言えます。
富士通製 FOMA端末は2世代前の“F903i”から携帯電話本体の向きを変えずに画面をピボットできる「ヨコモーション機構」を採用しています。こうすることで普段の操作感、グリップ感を保持したままフルブラウザによるウェブブラウジング、ワンセグテレビ鑑賞、アプリ操作が可能となりました。さらに F905i では FOMA 905i シリーズ最大の 3.2インチ フルワイドVGAディスプレイを持っており、その解像度は 300ppi を超え、印刷物並の細かさを実現しています。フルVGA(864 x 480 pixels)は 905i シリーズの共通仕様となっていますが、F905iは1677万色フルカラーIPSパネルであることが最大の特徴です。
IPS(In Plane Switching)とは本編でも説明したとおり、斜めから画面を見ても色が変わらない広視野角・高画質な液晶駆動方式であり、これまでグラフィックデザイン向けの高級コンピュータ用ディスプレイにしか使われてきませんでした。本記事では「IPSオタク」のわたくしミヤハンが、そんなIPSパネルを搭載してしまった携帯電話:F905i のディスプレイについて写真と共にレビューしていきます。
※ 本レビュー記事は F905i の液晶ディスプレイのみを取り上げています。“携帯電話”としてのレビューはほかのウェブサイトでご覧下さい。
【ご注意】この記事で紹介する画像はすべて実写です。ハメコミ合成は一切していません。
白輝度 [ cd/m2 ] | 黒輝度 [ cd/m2 ] | コントラスト比 | 白点色温度 [K] | |
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最大輝度 | 360 cd/m2 | 0.51 cd/m2 | 707:1 | 6100 K |
最小輝度 | 35.4 cd/m2 | 0.05 cd/m2 | 707:1 | 6100 K |
まず「液晶ディスプレイ」としての基本性能、輝度とコントラスト比、そして白点色温度を測定しました。結果は上の表の通りです。携帯電話用ディスプレイとしてはたいへん好成績です。さらに輝度の調整範囲が 10:1 と極めて広く暗い場所から晴れた日の屋外にも対応できます。
次に照明を消した室内で、KONICAMINOLTA DiMAGE A200 を用いて、ホワイトバランス・絞り・感度固定で撮影を行い、F905i の画面視野角を調べました。まずは水平方向の視野角ですが、若干の彩度低下・カラーシフトが起こっていますが極めて優秀です。ほとんどの機種がちょっとでも角度を付けると色がおかしくなってしまう中で、この広視野角は驚異的です。
次に垂直方向の視野角ですが、これも水平方向と同様に極めて広い事が判ります。あらゆる方向に広い視野角を持っているからこそ「ヨコモーション」が実現できると言っても過言ではないでしょう。
しかし F905i のIPS液晶パネルは液晶分子が一方向にしか駆動しない「シングルドメイン」であるため、特定の方向からはTNパネルのような大きな色変位が起こります。なんだかヒトの盲点みたいですね。ちなみにコンピュータ用のIPS液晶ディスプレイは、それぞれ位相が逆な2つドメインを持っています。(デュアルドメイン)
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テスト画像をみると黒つぶれ・白飛びがなく、人肌や植物の色が生々しく再現されています。フルカラー対応は伊達ではありません。そこらの2万円で買えるコンピュータ用液晶ディスプレイより高画質と言えます。発色はIPSらしい自然で立体感・透明感のある美しい色です。
F905i のメインディスプレイは、ラップトップコンピュータの液晶ディスプレイとsRGB対応液晶ディスプレイの中間くらいの色域を持っています。数年前の中堅コンピュータ用液晶ディスプレイくらいでしょうか。これだけの表現力を持っていれば十分です。でもローエンドユーザはおそらく他社のNTSC比100%オーバーのギトギト・ケバケバカラーのディスプレイのほうが魅力的に感じるでしょうね。(基本的に色は不自然なほど彩度が高く、明るいところは真っ白に飛び、暗いところは真っ黒に潰れ、画面はピカピカと光沢を持つ方が素人受けします。)
▲ F905i でグラデーションを表示
最後に階調再現性のテストです。ごらんの通り大きなトーンジャンプは認められません。「ごまかし」の常套手段であるS字カーブガンマカーブなどにはなっておらず、とてもナチュラルな特性です。しかしアラが目立ちやすいグラデーションを多用したCGなどでは、一部階調飛びが見られることもありました。また、ナチュラルグレーのグラデーションを見ると高域でが青かぶりが見られます。たいへん惜しいですが携帯電話の描画エンジンにしては大健闘といえるでしょう。このへんはさすがフルカラー対応と言ったところです。
実はフルカラー、つまり1,677万色を再現できる携帯電話は DoCoMoだけで、au・Softbank 共に有機ELディスプレイを搭載した機種を含めてフルカラーを表示できる機種は1つもありません。現行の FOMA 905i シリーズでフルカラー対応なのは、この F905i、SONY Cyber-shotケータイ SO905iCS、SHARP SH905i、SHARP AQUOSケータイ SH905iTV の4機種だけです。au、Softbank においては最新のラインナップにたった6万色しか再現できない機種まで存在します。
※ あなたが今見ているディスプレイの性能があまりに悪い場合、フルカラーのグラデーションも滑らかに表示されない場合があります。
▲ フルカラー 16,777,216色:DoCoMo FOMA F905i、SH905i、SO905iCS など
▲ 262,144色:au AQUOSケータイ W61SH、Woooケータイ W53H、INFOBAR 2、Softbank 920SH、921T、820SC など
▲ 65,536色:au W62S、EXILIMケータイ W53CA、Softbank X02HT など
さきほど、フルカラーを表示できる機種は DoCoMo のしかないことをお話ししましたが、逆に DoCoMo には有機ELを採用した機種が1つもありません。DoCoMo FOMA 905iシリーズ全機種で GPS やフルブラウザ機能を標準搭載しています。同時に、これらの機能を快適に利用するためフルワイドVGA以上のディスプレイが標準仕様となっています。
そのためドコモと携帯電話ベンダー各社は表示できる情報量が少なく、屋外での視認性が悪い有機ELディスプレイの採用を見送ったと考えられます。ぱっと見、色が派手で「キレイ」なことから適当にユーザーを引きつけられる発展途上の飛び道具を使わず、あくまで携帯情報デバイスとしての機能性・信頼性を優先したドコモは、やっぱり大人(社会人)からの信頼が厚いキャリアらしいですね。
ちなみになぜ有機ELディスプレイが屋外で見えにくいかというと、携帯電話に使われている液晶ディスプレイはバックライトに加え、外から入ってきた日光などを反射させてバックライトとして利用する「半透過型液晶パネルモジュール」を使っているため、極めて明るい炎天下でもなんとか画面を見ることができます。半透過液晶は液晶とバックライトの間に光を透過する部分と反射する部分を細かく混在しているシートを挟むことで実現しています。(しかし最近では画質を優先して全透過型、またはかなり透過型に寄った半透過型液晶を積んだ携帯電話が多く、これらの機種は有機EL同様、屋外に弱いです。屋外での使用を考慮するなら、半透過型液晶である新モバイルASVパネルを搭載した SH905i などが最適でしょう。)
一方、有機ELディスプレイは素材そのものが光る「自己発光型ディスプレイ」であるため、そのようなワザが使えません。携帯電話メーカーは「コントラスト比10,000:1!」などと宣伝していますが、ちょっと明るい所に行けば、たちまち100:1、10:1になります。暗い部屋の中で一人、3インチの小型ディスプレイでワンセグを見るには良いでしょうが、有機ELディスプレイを携帯電話に用いるのにはまだまだ課題が多すぎると言わざるを得ません。
しかし解像度の問題は2008年中に3インチクラスのフルワイドVGA有機ELディスプレイを搭載した携帯電話が登場するそうですし、屋外での視認性も年々輝度も上がってきているので時期に解決されるでしょう。FOMA 910i シリーズが出るころには全ての面で有機ELが液晶に対し有利になっているかもしれませんね。非常に楽しみです。
これ以降のトピックは「FOMA F905i 3.2インチ フルワイドVGA IPS液晶ディスプレイレビュー 2ページ目」をご覧下さい。