最近マイクロソフトのウェブブラウザ・Internet Explorer(以下IE)から他のブラウザへ乗り換える人が急増している。一時期95%という暴力的シェアをもっていたIEは、現在80%代にまで低下した。この原因を解説するとともに、IEの非難、ユーザーへのIE離れを推奨しようと思います。
IEに限らないのは誰もが知っていることだが、マイクロソフトは自社のソフトウェアを普及するためには手段を選ばなかった。その証拠に、マイクロソフトは毎年あらゆる企業、機関から独禁法関連で訴えられ続けている。しかしそれはしっぺ返しにはあたらないだろう。なぜなら今のマイクロソフトにとっておそらく1000万ドルの和解金や罰金は痛くもかゆくもないからだ。
かつて、ウェブブラウザ市場は元祖であり最有力ブラウザ:Netscape(ネットスケープ)が握っていた。そんなときマイクロソフトがIEをリリースし、自社のOS:Windowsと抱き合わせてシェアを無理矢理拡大していった(もちろんこの件ものちに裁判となり抱き合わせ商法ということで敗訴になる) 両ブラウザは競ってバージョンアップを繰り返し、独自の機能を追加していった。ブラウザ黄金期とよばれる時代である。このころは僕個人から見ると、以前からパソコン通信をやっているようなベテランはNestcape、新規ユーザー層はIEが多かった。そんなブラウザ戦争の結果は悲惨なものだった。人々はWindowsにはじめから入っているIEしか使わなくなった。Netscapeは勢いをなくし、瀕死状態まで痛めつけられた。こうしてIEの独裁体制が作られたのである。
これだけで気にくわない話なのに、マイクロソフトはそんな甘くはない。独裁的シェアを獲得したと確信したマイクロソフトは急にバージョンアップのスピードを落とし、ついには2001年にIE 6.0をリリースしてから全く動かなくなってしまった。 マイクロソフトはIEの開発が事実上ストップしていることを強く否定しているが、Windowsの主力アプリケーションが4年近くもアップデートされないのは、誰が見ても怪しいだろう。ちょうどMac版 IEの開発が終了したのもこのころである。
IEに食い荒らされたブラウザ市場だったが、2003年に登場したMacOS X 純正ブラウザ・Safari はマックユーザーだけではなく、ブラウザ業界に大きな衝撃と刺激を与えた。IE、Netscape、Mozillaファミリーのレンダリングエンジンはみな「Gecko」というものに対し、Safariは「KHTML」というレンダリングエンジンを使っていたからだ。KHTMLエンジンはたった14万行のコードで書かれた軽く、高速なエンジンだった。実際、Safariが3MBなのに対し、Netscapeは17MBもあった(注:しかしNestcapeはメールやコンポーザー、IMなどの機能を備えている)。Geckoの開発スタッフは「Appleの選択は正しい」とコメントを出し、Geckoエンジンのコードが乱雑で膨大であることを改めて実感することになる。
しかしGeckoエンジンの開発者は偉かった。自分たちでオープンソースベースのMozillaプロジェクトを立ち上げ、手もつけられないほど膨張したスパゲティーコードと奮闘し、資金の危機と戦い、マイクロソフトからの圧力からも耐え、2004年ついに「軽く、高速」というMozillaプロジェクト最大の目標を達成した Firefox がリリースされた。
ここでちょっと別の話をしたい。勝利を確信して停滞していたIEを尻目に、ブラウザ業界はいつの間にか大きな進化を遂げていた。まずはHTML自体の進化。いままで、ウェブページの多くは「HTML規格に準拠した」ものではなく「IEで見られるもの」を作ることに専念されていた。しかし、近年 W3C の地道な活動の成果か、業界は本来のHTMLの姿に戻ろうとしている。HTML 4.01、XHTML 1.0 に代表される世界標準の規格に準拠したHTMLページが増え始めたのだ。また、文章構造をきちんとデザインし、物理要素(本来の情報)はHTML、論理要素(見栄えなどの情報)はCSSに書くというオブジェクト指向の考えも普及し始めている。これにより誰でも見やすい、検索ロボットも理解しやすいバリアフリーのウェブデザインが可能になった。またCSSを用いることで、いままでできなかった手の込んだデザインができるようになった。しかし、これらの普及を妨げているものがいる。IEである。IEは次世代HTMLやCSSの解釈において多数のバグがあり、ウェブデザイナーの悩みの種となっている。現在、ウェブデザイナーは頭の悪いIEをだまして正常に表示させる技(ハック)を駆使し、必要のないはずの努力をしてウェブページを制作している。
次に機能面だ。現在のブラウザは多くの機能を搭載している。ホップアップブロック機能、RSSのサポート、タブブラウジング機能などなど。IEはせいぜいホップアップブロック機能が最近導入されたくらいである。そう、いつの間にかIEはどういう角度から見ようと老いぼれブラウザになってしまったのだ。
話を戻そう。Firefox のリリースは僕の予想、Mozillaプロジェクトスタッフの予想、ジャーナリストの予想を遙かに上回った。firefox PR のダウンロードが800万件と予想以上に多かったため、事前にサーバーや回線を増強したのにもかかわらず、Firefox 1.0のダウンロードサイトは大パニックになった。リリース当日は半分のビジターがサーバーに接続さえできず、接続できた人もトップページの読み込みに1分近く待たされた。Firefox開発者はのちにこれを「成功の危機」と評している。結果、リリースからたった5日間で100万件のダウンロードがあったのだ。さらに2週間後にはそれは560万件に増加していた。そしてそれをダウンロードした人々は本当にFirefoxを使っていた。IEのシェアは80%代に落ち、Mozillaは2%から8%と大きく成長した。考えてほしい。データが古いのだが2002年の段階ですでに世界のインターネット利用人口は6億人を突破している。つまり1%とは600万人ということになる。もちろん、インターネット利用人口とブラウザのシェアの算出方法にはかなりの違いはあるが、これはとんでもない大成功と言っていいだろう。
時代が進むごとに、コンピューターやインターネットを利用する際の敷居がどんどん低くなりつつある。もはやかなりの人々が自分の使っているウェブブラウザの名前さえ言えない時代だ。多くの人が「パソコン=ウィンドウズ」という方程式を信じている。ここにはもちろん「ウェブブラウザ=インターネットエクスプローラ」という式も内包されている。正直なことをいうと、僕はほとんどのWindowsユーザーは、自分の信念ももたず、周りが使っているからという理由でコンピューターを選び、その可能性の1%も使わないでいると見下していた。しかし、いま多くの人がIEを離れ、よりよいブラウザを求めて試行錯誤をしている。これはとてもすばらしいことだと思う。
現在、Mozilla Foundation、Opera Software、Apple Computerなどの、まあいってしまえばマイクロソフト以外のほぼすべてのソフトウェアメーカーが集結し、危険なActiveXに対抗しようとウェブブラウザ内部でアプリケーションを動かすための新規格の開発するプロジェクトを発足させた。このようにユーザーだけではなく、企業レベルでIE離れが進んでいる。個人的に、ぜひIEはこの世から抹消されていただきたいアプリケーションではあるが、重要なのはユーザーが良いと思ったものを自由に選べることだ。1品しか置いていないパン屋さんにはだれも入らない。選べる自由こそ最大の喜びである。ぜひ次の章をよんで、あなたもいまこの文章を読んでいるアプリケーションを選び直してはいかがだろうか。
さきほど話したようにIEは最新のHTMLや、CSSに十分対応しておらず、多くのバグを抱えています。多くのウェブデザイナーが頭を抱えています。こんな時代遅れなブラウザ、さっさと窓から投げ捨てましょう!
タブブラウジングもできない、RSSなんて当然見られない。さらにはもはや標準的になった画像フォーマット:PNGの透明度さえサポートしていない。こんな低機能なブラウザ、さっさと窓から投げ捨てましょう!
そしてこれがメインです。IEのセキュリティの甘さは開いた口がふさがりません。コンピューターウイルスのよき玄関として、情報流出のよき出口として、、、。IEはある意味高性能かもしれません。国土安全保障省などのセキュリティ対策の主要組織では現在、IEの使用中止を推奨しています。こんな危険なブラウザ、窓から投げ捨てましょう!
2003年から2004年11月の2年弱の主なIE関連ニュースのタイトルを並べてみました。(ニュースサイト:CNET Japan より)
僕が悪いニュースと判断したものは赤い文字で表示してあります。いかがでしょうか?これでもIEをやめない理由があるなら教えてほしいものです。三菱ふそうなど目ではありません。
IEはあなたのコンピュータを危険にさらします。もっと安全なブラウザに乗り換えませんか。既に多くの人々が乗り換えています。彼らの意見に目を通し、自分に合ったブラウザを選んでください -- http://browsehappy.com/
選ぶのはあなた自身です。安全なウェブブラウジングをしたいのなら、僕は Firefox や Opera をすすめます。